今まで一番のコンディション不良のリーフチェック。でもみんな頑張って調査してくれました。
リーフチェック与論2006Part2日程
       開催日: 前日ミーティング 2006/11/17(金)与論島防災センター3F
            : 調査日        2006/11/18(土)茶花漁港・北西沖
            : 結果報告会    2006/11/18(土)与論島防災センター3F

参加者:総数23名(島外ボランティアダイバー8名 チームサイエンティスト1名 島内ダイバー13名)

当日のコンディション: 天候/大雨 南の風・強 気温/24℃ 水温/24℃ 波・うねり/やや強

※今回も初めて参加されるボランティアダイバーも数名いたので1ダイブ目を練習・2ダイブ目を
本調査と使用としたが、悪天候および海況不良が予想されたため、1ダイブ目から浅場・深場共 
一度に調査を行い、それを本調査とし、午前中1ダイブ調査を終了しました。
今回のリーフチェックは、大雨・波浪という、与論島リーフチェック始まって以来、最悪と思われる
コンディションではあったものの、島内・島外のボランティアダイバーの協力の下、無事終了する
ことができました。しかし季節外れの南風の影響で、通常11月に調査をする「供利漁港南東沖」の
調査を断念し、例年6月の調査に使われる「茶花漁港北西沖」での調査となりました。そのことにより
今まで気付くことができなかった季節による変動など新たな発見ができ、有意義な調査となりました。
なお、今回調査ができなかった「供利漁港南東沖」の調査は、島内ダイバーの協力をいただき
12月に調査をしましたので、合わせて報告したいと思います。
魚類(生息数)
水深 5m 12m
実施年 06
11
06
06
05 04 03 02 01 00 06
11
06
06
05 04 03 02 01 00
チョウチョウウオ科 3 3 13 8 7 9 12 - 15 4 6 11 15 8 6 -
イサキ科 0 0 0 0 0 0 0 - 0 0 0 0 0 0 0 -
フエダイ科 0 0 0 0 0 0 0 - 0 0 0 0 0 0 0 -
サラサハタ 0 0 0 0 0 0 0 - 0 0 0 0 1 0 0 -
ハタ類(30cm以上) 0 0 0 0 0 0 0 - 2 0 0 3 0 0 0 -
メガネモチノウオ 0 0 0 0 0 0 0 - 0 0 0 0 0 0 0 -
カンムリブダイ 0 0 0 0 0 0 0 - 0 0 0 0 0 0 0 -
その他のブダイ科(20cm) 6 4 11 16 3 9 8 - 6 2 11 13 0 0 5 -
ウツボ 0 0 0 1 0 0 0 - 0 0 0 1 1 0 0 -
気になる今回の調査結果は・・・
無脊椎動物(生息数)
水深 5m 12m
実施年 06
11
06
06
05 04 03 02 01 00 06
11
06
06
05 04 03 02 01 00
オトヒメエビ 0 2 0 0 0 2 0 - 2 3 0 4 1 0 0 -
ガンガゼ属 40 269 2 0 1 4 4 - 82 21 2 2 8 6 10 -
パイプウニ 6 11 16 2 19 16 7 - 0 0 1 1 2 3 4 -
食用ナマコ 0 0 0 1 0 0 0 - 0 0 0 0 1 0 0 -
オニヒトデ 0 0 2 0 0 1 0 - 0 0 0 0 0 1 1 -
シャコガイ属 10 20 10 3 22 14 5 - 1 5 10 8 2 5 2 -
シラヒゲウニ 0 0 0 0 - - - - 0 0 0 0 - - - -
ホラガイ 0 1 0 0 1 0 0 - 0 0 0 1 0 0 0 -
イセエビ属 0 2 0 0 0 0 0 - 0 0 0 0 0 0 0 -
底質(被覆率%)
分類 5m 12m
実施年 06
11
06
06
05 04 03  02 01 00 06
11
06 05 04 03  02 01 00
ハードコーラル(HC) 12.5 9.5 7 13 2 4 3 - 11 12 13 19 13 9 6 -
ソフトコーラル(SC) 3 2 2 3 2 1 1 - 1.9 1.5 2 1 4 1 2 -
最近死んだサンゴ(RKC) 0.5 0.5 0 0 1 0 0 - 0 0 1 0 1 0 0 -
富栄養価指標藻類(NIA) 2.5 4 5 4 0 6 2 - 4 30 32 43 28 16 24 -
海綿(SP) 0 0 0 1 0 0 0 - 0 1.5 0 0 0 0 0 -
岩(RC) 82 80 85 78 84 80 86 - 75 47 44 29 44 69 41 -
礫(RB) 0 0 0 0 3 1 0 - 2.5 4 1 0 4 1 5 -
砂(SD) 0 1.5 1 0 8 7 9 - 5.6 4 7 7 5 4 23 -
シルト(SI) 0 0 0 0 0 0 0 - 0 0 0 0 0 0 0 -
その他(OT) 0 2.5 0 0 0 0 0 - 0 0 0 0 1 0 0 -
そして今回、各調査班の主な調査結果を折れ線グラフにしてみたところ・・・
※06.6月のガンガゼの数値は、推測値です。
魚類  浅場・深場共に生息数の推移が10%前後の範囲に収まっている為、計測誤差を含めて
考えるとほぼ一定の数値になり、この調査ポイントでは安定していると考えれれます。しかし
他のダイビングポイントと比較すると、魚の数が少なく感じられるポイントです。

無脊椎 オニヒトデが見つからない状態がここ数年続いており、とても喜ばしいことではありますが
ここ最近の特徴として、ガンガゼ(ウニの仲間)が急増の傾向にあります。ガンガゼは水質汚染の
指標になりうる生物であり、他の調査でも与論島沿岸の水質があまり良い状態ではないという
噂も聞いており、今後リーフチェックに合わせて、水質調査の結果も注目すべきだと考えられます。
2006.6
2006.11
2006.6
2006.11
2006.6
2006.11
2006.11
2006.6
底質  今回の調査で最も面白い調査結果がでたのは、深場の海藻類と岩盤との関係です。
毎年6月に調査しているポイントに今回初めて11月の調査となり、6月には多く見られた海藻類が
11月は枯れてしまい、その場所が岩盤がむき出しになっていることが、グラフにおいて対象的な
結果となって現れました。また、あまり良くない兆候も表れています。浅場・深場共に2004年まで
順調に伸びていたサンゴ類が、浅場では頭打ちに、深場では減少傾向にあることが見受けられ
ます。これも無脊椎生物で触れた、水質の低下等の原因によるものかも知れません。また今回の
調査ポイントでは見られませんでしたが、前回のリーフチェックで指摘があったレイシガイ類の食害
も、各ダイビングポイントでかなり見受けられます。


チームサイエンティストからのアドバイス
上記の調査結果より、今回のチームサイエンティストの入川暁之氏より以下のアドバイスをいただく
ことが出来ました。

@ レイシガイ類の実態調査が必要である。
A ガンガゼの増加と周辺海域の水質低下に留意する。
B 成長の早い、ミドリイシサンゴ類の幼群体密度を記録すべき。

@・Aは現在あるサンゴの衰退の原因を、直接的および間接的に取り除くために必要な行動だと
思います。Bは将来成育していくであろうサンゴの幼群体がどの程度あるか、また増減の程度を
確認し、@・Aの活動を進めていくための指標になるのではと思われます。


総括
与論島周辺海域の状態は、与論島自体の自然の健康状態のバロメーターのように思われます。
その与論の海の異常な状態は、与論島全体の健康状態の悪化を暗示していると言っても過言では
無いのではと思います。いずれにせよ、以前の自然豊かな与論島を取り戻す為には、全ての
島民の協力と、多大な努力が必要だと考えます。その活動のためにダイバーである私たちが微力
ではありますが、お役に立てることができれば幸いだと思います。またハプニング続きだった今回の
リーフチェックに、遠路はるばる参加していただいた島外のボランティアダイバーに、この場をお借り
して御礼申し上げます。(どんなハプニングだったかは、「潜水堂日記10」をご覧ください。)
また引き続き『与論島リーフチェック』にご参加いただけますようお願いいたします。
気になる今回の調査結果は・・・
皆さんかんばって調査してくださいね
出発前のブリーフィング中です。
事前ミーティングしっかり聞いておこう。
まずは魚類調査班の出発です。
無脊椎班の面々です。
底質班。かなり真剣に見てますね!
お昼は与論名物「みしじまい」です。
結果報告会。水質が少し心配。
もう1つの楽しみの懇親会
各方面よりご協賛をいただくことができ、ささやかながら抽選会を行うことができました。
今回はコーディネータおよびサイエンティスト不在のリーフチェックのなった為、正式なコメントは
ありませんが、私個人的な印象を述べてみたいと思います。

魚類  浅場・深場共に生息数の推移が多少の増減はあるものの、計測誤差を含めて考えると
ほぼ一定の数値になり、この調査ポイントでは安定していると考えられます。やはりこのポイントも
他のダイビングポイントと比較すると、魚の数が少なく感じられるポイントです。

無脊椎 このポイントもオニヒトデが見つからない状態がここ数年続いており、喜ばしいことでは
ありますが、深場のガンガゼが茶花側程ではないですが、徐々に増加の傾向にあるように
思えます。その他は、ほぼ横ばい傾向に感じられます。

底質  測定誤差の範囲ではあると思いますが、浅場・深場共にサンゴ類の数値がこの数年の中で
低い数値であるように感じます。特に深場はリーフチェックを始めて以来、最低の数値となってしまい
ました。実際に調査をした際目立ったのは、測定ラインからは外れているものの、レイシガイ類の
食害を受けているものが多く見られることがありました。深場のサンゴ類が多少の増減をしつつも
少しずつ減少していると思われる様子が、下記の折れ線グラフを見ても分かります。
参加された皆さん。本当にありがとうございました!!
リーフチェック与論2006Part2その2日程
開催日        :調査日   2006/12/10(日)供利漁港南東沖
参加者        :総数8名(全て島外ボランティアダイバーです。) 
当日のコンディション: 天候/雨 北西の風・やや強 気温/24℃ 水温/23℃ 波・うねり/やや強

※全員が経験者の為、ミーティングは無しで行いました。また雨とうねりの強い状況の中、少人数の
ため、2ダイブでの調査となりました。
魚類(生息数)
分類/水深 5m 12m
実施年 ’06 ’05 ’04 ’03 ’02 ’01 ’00 ’06 ’05 ’04 ’03 ’02 ’01 ’00
チョウチョウウオ科 16 28 11 7 16 27 0 15 26 23 27 22 31 36
イサキ科 0 0 0 0 1 0 1 0 1 0 0 0 0 0
フエダイ科 0 0 0 0 2 0 0 0 0 3 0 0 0 0
サラサハタ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0
ハタ類 (30cm以上) 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 1 0
メガネモチノウオ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
カンムリブダイ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
その他のブダイ科 (20cm) 6 12 1 3 8 16 0 1 4 11 7 5 5 0
ウツボ 0 1 1 0 1 3 - 0 0 1 1 0 0 -
無脊椎動物(生息数)
分類/水深 5m 10m
実施年 ’06 ’05 ’04 ’03 ’02 ’01 ’00 ’06 ’05 ’04 ’03 ’02 ’01 ’00
オトヒメエビ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
ガンガゼ属 21 23 2 0 0 21 10 10 9 5 5 1 3 0
パイプウニ 8 10 0 7 8 3 4 1 1 0 0 1 0 0
食用ナマコ (バイカナマコ等) 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 1
オニヒトデ 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0
シャコガイ属         4 12 6 12 6 12 10 7 9 17 12 13 10 10
シラヒゲウニ 0 0 0 0 - - - 0 0 0 0 - - -
ホラガイ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
イセエビ属 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
底質(被覆率%)
分類/水深 5m 10m
実施年 ’06 ’05 ’04 ’03 ’02 ’01 ’00 ’06 ’05 ’04 ’03 ’02 ’01 ’00
ハードコーラル (HC) 17 21 23 15 21 20 20 21 29 22 37 23 41 38
ソフトコーラル (SC) 1 3 3 1 1 0 3 0 0 0 1 1 2 1
最近死んだサンゴ (RKC) 0 0 0 0 1 0 1 2 5 0 1 1 2 1
富栄養価指標藻類 (NIA) 4 3 1 4 4 4 3 9 3 8 12 2 7 2
海綿 (SP) 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 2
岩 (RC) 75 70 71 83 73 74 72 75 59 59 45 69 44 53
礫 (RB) 1 1 0 0 0 0 1 4 2 5 2 1 1 3
砂 (SD) 1 1 2 0 1 1 1 1 2 6 3 3 2 1
シルト (SI) 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0
その他 (OT) 1 1 0 0 1 1 0 1 0 0 0 1 0
今回のリーフチェックに参加していただいた皆さんの様子です。
そして12月0日に行われた供利漁港南東沖の調査結果です。
黄緑色の折れ線グラフに注目。赤い矢印のように徐々に減少傾向にあると思われる。
総括
茶花側同様、あまり良い状態ではないと思われます。またこのポイントには以前から懸念されていた
レイシガイ類の大量発生が、現実となりつつあり、これもサンゴ類の減少傾向の一端を担っているの
ではないかと思われます。これは何らかの原因で、生態系の異常が発生したのではと考えます。
生態系の異常は、主に人間のもたらす影響が一番重大だと思われます。やはり与論の自然豊かな
状態を取り戻す為には、全ての島民の協力と多大な努力が必要だと、考えざるを得ませんでした。
強いうねりと雨の中、調査に参加していただいた地元住民のダイバーの皆さんです。
左からレイシガイ類の食害・病気・白化現象だと思われるサンゴたちです。与論島の海の中では
このような状況が、多く見受けられることがあります。ダイバーもダイバーで無い方も、この現状を
知ってください。そして健全な状態の海になるように、みんなで努力しましょう。
最後に
初めてのリーフチェック当番店として、出来る限りのことをさせていただいたつもりではありましたが
いかがだったでしょうか? 思わぬハプニングや天候不良(しかも両日とも)にもかかわらず、参加して
いただいた皆さん。また影で私たちの活動に協力していただいた皆さんや、活動に賛同していただいた
皆さんに、この場をお借りして暑く御礼申し上げます。また本年も6月・11月にリーフチェックの開催が
予定されています。私たち竹内潜水堂も「チーム潜水堂」として毎回参加していく予定です。
今まで参加していただいた皆さんも、初めて参加してみようと思っている皆さんも、「与論島リーフチェック」
で、お会いできることを楽しみにしておりますので、これからも宜しくお願いいたします。

※注意
調査結果やコメントより、与論島の海が悪い印象を受けられる方もいらっしゃるかもしれませんが
全ての場所がこのような状態ではありません。リーフチェックを行うポイントを選定するにあたり
他のポイントよりあまり良くない状態であったポイントが、どのように変化していくかを観察していく
意味も含めて行われていることをご理解ください。しかし与論島近海の状態が、とても良くなっている
とは言い切れない部分もあり、警鐘を鳴らす意味であえて辛口のコメントにしてあることを、ここに
おことわり致します。
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